今回のサンプル採取は、有明海の環境変化に関する基礎データの収集を目的とするもので、採取作業は、底質の改良・攪乱が少ない場所として選定された地点で実施し、底質地層をスライス断面として採取するジオスライサー方式を用いて、約4~2m深度でアサリ・サルボウ等の貝化石、底生有孔虫、珪藻、渦鞭毛藻などの化石を含んだ底質サンプルを採取しました。 この調査研究事業は、有明海の干潟・浅海域の深い地層の泥を分析し、有明海が健全だったと考えられる、過去から現在までの干潟環境の変遷を把握することにより、有明海の望ましい姿を再現し、最終的には、底質環境データべースの構築、干潟・浅海域における底質の物質循環モデルを実態に即して作成し、有明海の底質再生への見通しを明らかにしようとするものです。 今回採取されたサンプルは、現在、堆積相・生痕相の解析、貝化石、底生有孔虫、珪藻、渦鞭毛藻等の化石分析、炭素・窒素の安定同位体分析、鉄、マンガンなどの重金属類やTBT(トリブチルスズ)・PCB(ポリ塩化ビフェニール)などの環境ホルモン物質の分析などの作業を行っているところです。その成果については、広く公表していく予定です。
今回の調査結果を基に、来年度以降は、調査地点を新たに増やして、本格的な広域面的調査や鉛直分布調査を実施し、精度の高いものとしていく計画で、広大な有明海干潟を掘り起こし、まさに有明海の過去から現在までの環境の変遷を掘り起こそうとする作業が始まったところです。
今回、フロート台船に小型のクレーン(カニクレーン)を搭載し、専用のステンレス製ジオスライサー(L=6.00m)を用いて地層採取を行った。