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有明海にまつわる人々

速水 祐一
はやみ ゆういち
佐賀大学低平地沿岸海域研究センター准教授

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1967年,京都府生まれ
1991年,京都大学農学部水産学科卒業
1997年,同農学研究科博士後期課程(水産学専攻)修了,博士(農学)
日本学術振興会特別研究員,愛知県栽培漁業協会技師,愛媛大学沿岸環境科学研究センター研究員,愛媛大学工学部教務職員を経て,現在,佐賀大学低平地沿岸海域研究センター准教授.専門は沿岸海洋学・陸水学
これまで舞鶴湾、琵琶湖、瀬戸内海、有明海、モンゴルやインドネシアの湖・内湾など各地の湖沼・内湾の環境について調査研究してきました.趣味は登山ですが、佐賀に来てからは山行の暇がなく,代わりに身近な風景や生き物の写真撮影を楽しみにしています。

有明海との出会い

2005年に佐賀大学有明海総合研究プロジェクトの准教授として赴任。 佐賀に来る前は、瀬戸内海の研究をしていた。有明海を見て、干潟の大きさ、生物の種類や数の多さにびっくりしたという。 速水さんが書かれた「豊饒の海・有明海の現状と課題」(2012年9月)の第8章 魚介類の生息環境としての有明海とその変動特性によると有明海の干潟の面積は全国の干潟の約4割を占めるという。また、埋め立てで垂直護岸化された岸辺が少ないこと、流域の人口が少ないことを有明海の特徴としてあげています。 速水さんは、瀬戸内海と比べて有明海は広大な泥干潟があるために、海にアクセスするのがむつかしいといいいます。
さて、今日は速水先生に貧酸素と赤潮について教えていただきました。 NPO法人有明海再生機構の有明海環境Q&Aも参考にして、レポートを書きます。

貧酸素水塊

(社)水産資源保護協会のHPによると

「貧酸素水塊は、主に夏季に底層で形成される溶存酸素濃度(DO)の低い水塊であり、一般にDO濃度が2~3ml/l(2.8~4.2mg/l)以下の海水」と定義されている。水中や泥中の有機物を餌として増殖するバクテリアなどの酸素消費が酸素供給を上回るときに貧酸素になる。
 酸素の供給は、植物プランクトンの光合成、大潮で海水がよく拡販される時、沖合からの酸素を多く含んだ海水の流入や河川から淡水が流れ込むときに生じる。有明海湾奥には筑後川が、その他一級河川が7つ流れ込んでいる。これらの川から酸素が供給されている。また、激しい風浪や台風の時にも、激しい攪拌により空気中の酸素が海水に供給される。

成層化と貧酸素

有明海は日本一の干満の差により、大きな潮流が起こり、河川から流入した淡水と海水は上下方向に十分に混ざり合う。しかし、梅雨時など河川の流量が増えた時には攪拌が追いつかない。十分に攪拌されずに水温や塩分が違うと、水の密度が異なる。密度が違う水塊は、軽い水が重い水の上に載ったように、層をなす。海水は、一般的に海面ほど塩分が低く水温が高い(軽い)。水深が増すと密度が大きくなる(成層化)。成層化が起こると、大気から溶け込んだ酸素、あるいは光合成で生じた表層の酸素が底層に送られにくくなる。その状態で有機物の分解などによって酸素が消費されていくと、底層で貧酸素化が起こる。その結果、底層に棲んでいる生物が死ぬことになる。有明海は日本一の干満の差により、大きな潮流が起こり、河川から流入した淡水と海水は上下方向に十分に混ざり合う。

赤潮

陸から大雨などにより、栄養塩が豊富な水が海に流入すると植物プランクトンが異常繁殖し、赤潮になる。赤潮が発生すると、プランクトンが海中の栄養塩を大量に消費するので、養殖ノリの栄養が不足し、色落ちや不作の原因になる。ノリ養殖期の冬の赤潮プランクトンは、近年はアステリオネラやユーカンピアが発生している。有明海では透明度の上昇がみられる。透明度の上昇は赤潮発生の増加の原因の一つと言われている。

 

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