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今有明海で起きていること

濁った健全な海が澄んだ不健全な海に

有明海の物質循環の主役「浮泥」

有明海に流れ込む微細な粘土粒子は、淡水中では分散して濁っているだけですが、海水中に入ると綿毛状の塊(フロック)に成長します。フロックにまとまる際に水中の栄養塩や有機物も吸着し海を漂います。これが浮泥です。

植物の腐食物や人間の生活排水などに含まれる有機物や窒素、リンのような栄養塩は、海に入り込む汚濁物質と呼ばれます。汚濁物質が増えると、海は、赤潮の多発、貧酸素の出現、有毒ガスである硫化水素の発生といった悪循環に陥り、死の海になってしまいます。

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浮泥は、栄養塩を吸着します。浮泥は、動物プランクトン、ゴカイ、カニ、貝などの餌になります。彼らは浮泥を丸ごと体内に取り込み、浮泥に吸着した栄養物だけを吸収して、粘土粒子は糞として排出します。

浮泥中の有機物は、浮泥に住み着いたバクテリアの餌にもなります。浮泥はいわゆる下水処理場の役割も果たしています。また、有機物を分解する際には窒素とリンを低分子の栄養塩、アンモニア、亜硝酸などに変化させて水中に溶出します。これらは有明海の最も重要な生き物のひとつである珪藻と、有明海の重要な産業である海苔養殖の栄養となるのです。

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有明海で重要な役割を果たしている浮泥が最近少なくなっています。図はランドサット衛星の写真を分析して透明度を推定したものです。赤い部分は濁りが濃く、緑色になるに従って透明度が高いことを示しています。1985年から2000年の15年間で透明度が上がって、浮泥が少なくなっていることが分かります。有明海では「濁っているから健全」なのに、現在は透明度が上がって不健全になっているのです。

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環境問題

浮泥が少なくなってきていることにより、様々な環境問題が発生しています。

赤潮

有明海ではたびたび赤潮が発生しています。河川から流れてくるリンや窒素によって栄養過剰になりやすい環境にあり、赤潮が発生しやすくなっています。

干潟の消失

干拓や浚渫の他にも、海底の陥没による干潟の消失が起こっています。有明海東岸では江戸時代に石炭の採掘が始まり、有明海の海底下まで多くの坑道が掘り進められました(三井三池炭鉱)。炭鉱が閉山した20世紀末から、坑道の崩落によるとみられる海底の陥没が起こり、それに伴って干潟が消失しています。

奇形魚問題

2000年代に入り奇形魚が生まれるようになってきています。 

有明海問題

開門調査

有明海異変と言われた2000年(平成12年)に大量のノリ色落ち被害が発生しました。その間、有明海の環境が日に日に悪化していく姿を目の当たりで見てきた漁業者は、諫早湾干拓事業の諫早湾閉め切り堤防の建設が悪化の原因だということで、有明海再生に向けて「開門調査」を終始要求してきました。この「開門調査」を巡っては、司法の場での争いとなりました。それが今でも続いています。

不漁問題

問題となっているのは、「開門調査」だけではありません。
2000年(平成12年)の大規模なノリの色落ち被害が発生した有明海異変以降は、不漁問題がクローズアップさせるようになりました。漁獲漁は、ピークの1980年頃から最近では減少傾向が続いています。
この問題を解決しようと、近年では様々な論議、活動がなされています。

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